サイドミラー 村山清志

その12
NHKスペシャル番組の反響

 
 バックナンバー 

  少し前の話になるが、7月のNHKスペシャルでトラック運送業界の厳しい実態を取り上げた番組が放映され、業界でも話題になった。題して「トラック・列島3万キロ〜時間を追う男たち」だ。放映後に、同番組に引っかけて「危ない業界」であることを印象付けような見出しで夕刊紙に取り上げられたりもした。

 ある業界紙が、この番組で取り上げられた業者を電話取材したところ、当初この業者は、無理な運行していることを誇張して取り上げられたなどとして怒りを露わにしていたという。このため、結果的に勇み足だったかもしれないが、番組に「捏造」があったように報じ、NHKと、そしてどうした経緯があったのかは定かでないが、この業者からも抗議と訂正を求められるというハプニングもあったという。

 「ああした実態を全部さらけ出して、かえって良かったんじゃないか」とは、ある業界団体役員の弁。大型トラックによる悲惨な交通事故が続発し、業界に対しても厳しい目が向けられがちなだけに番組の反響を懸念しているかと思いきや(そう思うこと自体、先入観があるのかもしれないが)、意外にサバサバした反応だった。

 というのも、NHKに寄せられた番組への意見・感想の中に、意外と言ったら語弊があるかもしれないが、苦労しながら運行業務をこなすドライバーへの同情や、厳しい業界実態に理解を示す声がかなりあったからのようだ。厳しい業務を強いられているトラックドライバーのことをもっと考えるべきといった意見もあったようだ。

 確かに、悲惨な事故を起こす業界の実態が明らかになったなどとして厳しく指弾する意見や、批判的な声ももちろん多くあったようだが、少なくとも、それが大半ということではなかったようだ。  このことは、それだけトラック運送が果たす役割や業界の実態に対する一般の認識と理解が深まったことの表れといえるかもしれない。

 業界では9月初めに、関東トラック協会の事業者大会が横浜市内のホテルで開催され、そこで採択された宣言の中で、最近NHKスペシャルをはじめ、業界実態に関する報道が多くなされているが、「トラック業界が置かれている窮状と責務を、これからも強く訴えていこうではないか」と呼びかけている。

 つまり、NHKスペシャルなどによる報道の反響を、どちらかと言うと肯定的に受け止めているわけだ。確かに今回は、業界の現状に対して理解を示すと言うか、同情的な声がかなり寄せられたようだが、いつもそうだとは限らない。業界にとっては両刃の剣となる側面もあり、場合によっては必ずしも芳しくない業界イメージをさらに増幅し、厳しい批判の目にさらされる危険性があることも覚悟する必要がある。

 そうしたことにならないためにも、単に業界の「窮状」を訴えるだけでなく、なぜそうした「窮状」を強いられれているのか、その背景・構造的な問題を含めてアピールしていく必要があるのではないか。

 

(物流ライター)

 ご意見、ご感想などは右記の電子メールまでお願いいたします。 desk@hjcenter.ne.jp
GOTO TOP