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VOL.54

奥の細道に思う

 最近楽しみにしていることは、日本経済新聞の金曜日の夕刊に掲載されている「こころのページ」にある奥の細道をたどるコラムを読むことだ。58歳の土田芳樹編集委員が、松尾芭蕉のあとを追って日本橋を出発して1ヵ月。ほのぼのとしながら、凛とした試みを感じる企画である。

 今から10年程前になるが、私が転勤の活動を始めた頃、「単身赴任のすすめ」という土田さんの記事が掲載された。私は縁もゆかりもない群馬の片田舎に転勤して引越ししたばかり。夫は新しい仕事に忙殺され、乳飲み子を抱えた私は生活情報もない寂しさにとらわれていた。

夫の転勤に左右されながら生きていく自分の生き方、妻の立場

 ちょうどそのころ、夫の転勤に左右されながら生きていく自分の生き方、妻の立場にどうにかしたいと、転勤族の妻達を支援していく活動を始めたばかりだったので、土田さんのコラムに非常に興味を持った。

 夫の立場としてどう転勤と付き合っていくのか、妻は大変なのに、夫は楽しそうに感じる、変だと思いませんか。お互いの立場を考えて欲しい、というお手紙を出したのだ。ある企画で妻達の気持ちを知りたいと取材されたのが縁で、年賀状をいただく仲になっている。それ以後、転勤族の妻達の活動を報告したり、単身赴任や離れた家族との付き合い方など、先輩転勤族として助言をいただいたりした。

 そんな土田さんがはじめたこの企画。どれだけ多くの人たちに元気を与えるだろうか。転勤を繰り返し、家族と別れて単身赴任。単身赴任を楽しむためには、自分の生活をしっかり自活できるようにならなければならない。料理に趣味にと前向きに生きていかなくては、と話す。その反面、家族との付き合い方がいろいろな面でぎくしゃくした時期もあったようだ。そういうことを通り過ぎて、定年を目の前にみての、新しい自分の発見と旅立ち。新たな生活が切り開かれていく気がする。奥の細道のあとをたどっていく中には自分の転勤先や、取材先がたくさんあるはず。そこでの出会いも土田さんにとって、とても懐かしく、次のステップにいくために必要なものなのかもしれない。

40代、50代の男性の自殺が急増している。 危うい時期なのかもしれない

 昨今、40代、50代の男性の自殺が急増している。年齢別主な死因の中で、1位のがんについで2位となっている(平成15年人口動態統計より)。危うい時期なのかもしれない。カードやローン、家族を養わなくてはならないという意識、ノルマをこなさなくてはならず、先が見えてきた仕事上のストレス、心の病が認められるようになったにも関わらず、まだまだ専門家に話す人は少ない。父権が失われていくにしたがって、彼らは何のために生きてきたのか、悩んで動けなくなってしまうようだ。

 今回の土田さんの挑戦。悩んでいる彼らに、一つの警鐘を促して、新しい一歩を歩んでもらうようになればいいと思う。陰ながら応援している。


※転勤ファミリー支援センター 代表 河野郁子


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